メモリー・オブ・カプセルホテル
東京に就活で来ていたころ
御徒町、上野あたりのカプセルホテルにはだいぶお世話になった。
学生割引で1000〜1500円とかなり安く済んだのである。
満室になることはほぼなく、
あっても乱立する別のカプセルホテルに泊まれることがほとんどだった。
客層はほとんどサラリーマンらしきおじさんたちだ。
男だけしかいないので、手渡された室内着を着た人間がロビーで座ってテレビを見たり、
パソコンを、カチカチやっている。
当然その日の終わりに来るわけだから、
みんな疲れた顔をしている。
そしてだいたい1人で泊まりに来ているのだからあまり会話はない、
ただテレビや新聞をめくる音、そして
受付の特に明るいわけでもない接客の声が響いているのである。まるでどこかの収容所みたいな空気があるよなと思っていた。
カプセルホテルの魅力の1つに大浴場がある。
ネットカフェならシャワーで済まさなければ、いけないものだが、ここではのびのび入れる。
もちろんタオルも支給してくれるのでありがたい。
お風呂あがりのドライヤーなどを済ませて、
冷水機の水を飲むとあとは寝るくらいしかすることはない。このあとはもう「カプセル」に向かうしかないのだ。
ちなみに2日連続で泊まったりすると
カプセルの閉鎖感に耐えられず陰鬱な気持ちになるのでオススメしない。
カプセル付近での思い出としては、
外国人利用者の人にチャイニーズ?的な声をかけられたことや、
「おまえうるせーーーんだよ!!!!」と
隣の人にブチギレるおじさんの声が響いたことくらいで、ドラマ的なことが起こったことはない。作業的に過ごしたりする、社会的な場所なのである。
しかしカプセルの中は治外法権
備え付けのテレビにはふつうにavが垂れ流されているチャンネルがあったりと、個室として機能し始めるのである。仕切りはスダレみたいなペラペラなものだったりするのに仕切りは偉大である。それからWi-Fiは繋がっていることが多いのでネットサーフィンしているといつのまにか朝になる。
いびきがうるさい人が近くにいなければ。
朝になると、アラームの音があちらこちらで少しずつ聞こえはじめる。
なかなか起きない人もいたりするから、
なりっぱなしのアラーム音に高頻度で遭遇したりする。
みな、まばらに居なくなっていく。
上野の早朝。いつも人に溢れてる場所から人がいないだけで何かぽっかり穴が空いているようだった。
カプセルホテルに泊まっていた時、
その日の夜どこに泊まるかも決めないでいた頃、東京に居場所がないみたいな妙な浮遊感があった。住んでしまったらそれは消えてしまった。