お菓子は永遠である
家の近くにはバンビという駄菓子屋さんがあったのだが、高校生になる頃にはアフラックに変わっていた。
形あるものは消えてしまうのか。
いやしかし、
お菓子は永遠である。
子どもの時に好きだったものを今食べても、懐かしさとともに美味しいし、
何より食べた思い出や思いは消えないのだ。
ピーナッツチョコだとか好きなお菓子は数あれど、いつからか俺の心を占めるのは、
あのまるで宝石のような輝きを放つお菓子。
ポロポロと崩れる儚い土台の真ん中に、
ルビーのように輝く赤色。
これでわかった人は相当鋭い(適
とにかくあれが好きなのだ。
名前は知らない、聞いたが忘れた、
しかしあれはきっと異国のお菓子だ。
マドレーヌのような、なんだが妖艶な名前が付いているに違いない。
好きすぎで逆に2年くらいは食べていない。
主張しすぎることはないが、決してお菓子コーナから消え去ることはないそんな孤高で美しい存在である。俺が振られた時も、仕事で病んだ時もいつもお菓子コーナーから俺を見守ってくれていたに違いない。
しかし憧れだけでは生きていけない。
もっと近くにいてくれる存在も必要だった。
そいつの名は「アンパンマンクッキー~アップルハニー味」
アップルハニー味。この優しさに包まれた味の組み合わせはなんだ、
それにアンパンマンときた、
慈善事業みたいな彼との組み合わせ、
半分どころか全部優しさで出来ている。
そいつの味はほんのり科学的だった、でもこれは人類の叡智。人類が到達した優しさの一種である。
そして後味はハニー!!ハニーが姿を残してくれるのだ、そしてしばらく口に残って幸せを与えてくれたのだ。
でも、やはり物体に永遠はないす。
モラトリアムを支えてくれたこのクッキーはいつのまにか製造が中止され、俺の前から姿を消した。それはまるで、俺が大人になるのを後押ししてくれるかのようにだ。
あのアマゾンですらもう取り扱いはないのだ。
でも、俺は大人になれなかった、
今でもスーパーにいくとあいつの影を探してしまう。あ、アンパンマン!!
とドキッとしたことは何度かある。
アンパンマンは俺を見る、
「よっ、元気か?」
「なんだよ!お前いたんじゃないか。探したよ!!急にいなくなるなんて…。」
「まだ…そんなこと言ってたのか…。
よく見ろ。俺は…」
よく見ると中身は歌舞伎揚になっていた。
言葉を失う俺にアンパンマンは真っ直ぐとした瞳で、瞬きもせずに言った。
「お前が大人になるの、待ってるぜ」
それからはいつかこのアンパンマンのこと美味しく食べてやりたいと思って口の中を鍛える日々を送っている。それがきっと、アップルハニーも望んでいることだ。