落し物と小心者
今朝も電車で、
斜め前に立って居た男の人が手袋を落とした。
あっ、と思ったが、咄嗟に声は出ず、
気づいて!、誰か言ってやってくれ!
と中央線、中野、新宿間あたりで祈って居た。
残念ながら祈りは届かず、新宿に着いた。
俺も乗り換えだし、その人も乗り換えのそぶりをしている…。
言えば楽になる、言えば楽になると
コミュ症を発揮していると
ついに、電車を降りて行ってしまった。
あぁ、もう!と思って、 手袋を持って必死で、追いかけた。
それで、いつもの定番、
その人の落し物でトントン&すっ、すいません、これ…!!である。
あっ、ありがとうございます!!
と爽やかなお礼を言う彼と対比して、
あっ…。っと、会釈してる様なしてないような感じでコクッとし、無言でエスカレーターを降りる俺…。頼むから俺の前で物を落とさないでくれや…と思う。なぜだが、話しかけるのにちょっと勇気いるのだ。
こんな感じで、特に東京に来てから、誰かが落し物をする場面に遭遇する。
ベビーカーを押しているお母さんが
子どもの靴とか、何かしらの布巾とか落とすのはまぁまぁ良く見る。
スマホを落とした女の子には、一瞬、え?なに!?って感じな顔をされたが、
変態ではないので0.5秒くらいで事なきを経た。
ポケットからお金を落としたおじさんもいた、
5000円と数枚のお札、貧窮していた俺に対する何かの誘惑かと思ったわ。
流石に咄嗟に貰ってやろうかとは思わなかったが、そのあと、あれいくらだったんだろう…と、ちょっとだけ悪魔が首を出したのはまぁ許してほしい。
大切なものを落としてはダメだぞ…。
どうせ拾うなら、めちゃクチャ莫大なお金とかがいい、そしてお礼で、少し分けて欲しい。
いや、そんな事もなくていい、知らない人に声をかけるのは中々エネルギーのいる事なのだ。
あぁ、落し物した人にリプしたい…。
落としたよ!いま!って呟きたい。
心の声だけで伝わる能力欲しい!
こんなにちっこい勇気しかないので、
たまに声をかけそびれてしまう時がある。
そしてさーっと、通り過ぎたあと。
後ろで快活な人と快活な人による
落し物コミュニケーションの声が聞けたとき、
やっとホッとする。究極の小心者です。ハイ。